行政においてソーシャルメディアはどのように扱われているのかを最近リサーチしている。海外まで目を向けると様々な事例があるのでそれは少しずつこのブログでお伝えしていくが、いずれにしても行政がソーシャルメディアを活用するにおいては誰にどのように権限を与えて、何をやり、何をやってはいけないのかを規定することが特に重要である。
そういうわけで、今日はアメリカ西海岸の都市、シアトル市のソーシャルメディア利用規約を翻訳して掲載することで、行政によるソーシャルメディア活用の基本的な部分を浮き彫りにしたい。
まず押えておきたいのは、シアトルがどのようなソーシャルメディアを利用しているかということだ。以下のBlogs and Social Media Sitesを見てほしい。
Blogs and Social Media Sites
http://www.seattle.gov/html/citizen/socialmedia.htm
このページを見るとElected OfficialsとCity Departments & Agenciesに分かれているが、いずれにしてもその中心となるのはブログとFacebookそしてTwitterである。
それではシアトル市のソーシャルメディア利用規約を見ていこう。今回原文となる City of Seattle social media use policy は以下のページで確認できる。
City of Seattle social media use policy
http://www.seattle.gov/pan/SocialMediaPolicy.htm
シアトル市ソーシャルメディア利用規準
目的
インターネットの使用途・範囲の急速な変化に伴い、市民のコミュニケーション手段や情報収集のスピードに対応するべく、シアトル市ではソーシャルメディアツールを利用し聴衆の幅を広めようという意向です。そこで市では正しい方向に導き計画達成させるべく、ソーシャルメディアの利用を活性化させます。
シアトル市は、市全体に代わってソーシャルメディアで何を「伝える」かを決めることに大きな関心と希望を持っています。そこで当規則でソーシャルメディアの利用についてのガイドラインを設定しています。
総則
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- シアトル市の各部署幹部にて設定されたソーシャルメディアサイトを実際に推進する際は、市長管轄のメディア通信部長による承認が必要。
- シアトル市のウェブサイト(Seattle.gov, SeattleChannel.org, SeattleCenter.com,
SPL.org等)は、市の主要なインターネットサイトとして存在すること。- シアトル市に最もふさわしいソーシャルメディアツールの使用は以下の2つのカテゴリーである。
- 旬な情報を迅速に普及させるための媒体として使用する。
- 市の情報をなるべく広範囲に広げるためのマーケティングやプロモーションとして使用する。
- 可能な限り、シアトル市のソーシャルメディアサイトに投稿された内容は、市の主要なウェブサイトでも閲覧可能にする。
- 可能な限り、シアトル市のソーシャルメディアサイトに投稿された内容は、公式ウェブサイトに記載されたシアトル市とのビジネスを行う際に必要な詳細情報、書類等またはオンライン・サービスに飛ぶリンクを貼ること。
- シアトル市に最もふさわしいソーシャルメディアツールの使用は以下の2つのカテゴリーである。
- シアトル市のウェブサイトにおいて、各部署の公的情報担当者が、各部署にて作成したソーシャルメディアサイトの内容の充実と良質なコンテンツ維持に責任を持つこと。
- 可能な限り、シアトル市のソーシャルメディアサイトは全て適切なシアトル市の政策と規準に準拠すること。そして、以下を含むが、これに限定されるものではない。
- 市の所有する電子媒体、インターネットアクセス、電子通信と他のアプリケーションの認可される利用について (Acceptable Use of City Digital Equipment, Internet Access, Electronic Communications and Other Applications)
- ウェブサイトのプレゼンテーションとアクセス規準 (Web Presentation and Accessibility Standards)
- ブログ・ポリシー (Blogging Policy)
- オンラインプライバシーとセキュリティポリシー (Online Privacy and Security Policy)
- 非行政情報とリンクに関する規準 (Policy on Non-Government Information and Links)
- 包括的福祉活動と社会秩序に関する行政命令、包括的社会秩序に対する政策 (Inclusive Outreach & Public Engagement Executive Order & Inclusive Public Engagement Policy)
DoIT(*1)のCitywide web team(*2)により例外が認められる場合があり、技術課長と適切な部署の公共情報長による審査を受ける。
- シアトル市のソーシャルメディアサイトは、シアトル市の倫理・選挙規程に準拠すること。
- シアトル市ソーシャルメディアサイトは、ワシントン州公開記録法に準拠する。閲覧者リストや投稿記事を含む、市の運営に関わるソーシャルメディアに掲載されたコンテンツは、全て公的記録と見なす。サイトを管理する部署は、ソーシャルメディアの公的記録に対する、市民からのいかなる要求にも完全且つ正確に応える義務がある。市の運営に関するコンテンツはアクセス可能な状態に保ち、要求に応えられるようにすること(シアトル市Twitter・Facebook・CityLink規準参照)。上記サイトにおいて投稿記事・コンテンツが、可能な限り明確に公的開示されることを基本とする。利用者は、公的開示要求が関連部門の情報開示担当者に伝えなければならないことを通知されるものとする。
- ワシントン州法およびシアトル市関連記録保留条項が、ソーシャルメディア形式とコンテンツに適用される。特定のソーシャルメディア規準文書内に特に指定のない限り、サイトを管理する部署は、関連記録保留条項に従って管理すべき情報を、必要な期間だけ、市のサーバーに原本の品質を保った状態で保持し、いつでもアクセス可能な状態にすること。特定のソーシャルメディアツールに対する適切な保持形式の詳細については、シアトル市Twitter、Facebook、CityLink規準を参照すること。
- ソーシャルメディア利用者・訪問者は、サイトの利用目的として、市の各部署と市民のコミュニケーションを図る手段として使用すること。シアトル市ソーシャルメディアの記事・コメントは、以下の内容を含むことが許されない。
- コメントしたソーシャルメディア記事に直接関係のないコメント
- 選挙活動または投票目的を支持あるいは対抗するコメント
- 罵詈雑言を書いたコメント
- 人種・信条・年齢・宗教・性別・結婚の有無・公的補助を受けていること・国籍・身体的精神的な障害または性的志向に関して差別するようなコメント
- 性的内容または性的コンテンツのリンク
- 商業的勧誘
- 不法行為を行うまたは促す内容
- 公共または公共システムの安全警備を脅かすような情報
- 第三者の法的所有権を侵すような内容
このガイドラインは利用者に開示され、またはハイパーリンクにて閲覧可能な状態であること。このガイドラインに沿って削除された内容は、適宜に日時、投稿者等の記録を残すこと。(シアトル市Twitter、Facebook、CityLink規準を参照)
- シアトル市は、ソーシャルメディア規則または適合する法律に違反していると見なされる内容がある場合は、制限または削除する権利を有する。
- シアトル市は、ソーシャルメディアツールを広範囲にわたって出来る限り一貫して使用し続ける。
- 市に対して提案された新しいメディアツールは、技術課長と適切な部署の公共情報長による承認を受ける。
- シアトル市のソーシャルメディアサイトの運営管理
- DoITのCitywide web teamは、市の各部署とスタッフから使用の承認を得た各ソーシャルメディアツールを維持管理する。
- DoITのCitywide web teamは、各シアトル市ソーシャルメディアサイトの、ログイン、パスワード情報を含めて維持管理する。部署毎の公共情報担当者は、DoITのCitywide web teamに新しいソーシャルウェブサイトや管理の変更、現存のサイトを知らせる。
- 市はソーシャルメディアサイトの内容をすぐに編集・削除できる状態にする。
- 市によって使用を承認された各ソーシャルメディアツールについて、次の文書が作成され適用される。
- 操作・利用ガイドライン
- ソーシャルメディアサイトのアカウントを管理する規準とプロセス
- 市と各部署のブランド設定規準
- 広範囲のデザイン規準
- ソーシャルメディアサイトの管理規準
ソーシャルメディア規準
次のソーシャルメディアツールが、シアトル市によって承認されている。
- ビデオ-ビデオ投稿規準 (Video Posting Standard)
- Twitter-Twitter規準 (Twitter Standard)
- Facebook-Facebook規準 (Facebook Standard)
- CityLink-CityLink規準 (CityLink Standard)
用語
*1:DoIT = Department of Infomation Technology
*2:Citywide web team = 情報戦略を担うチーム、情報戦略課
ーーー【翻訳ここまで】
シアトル市のソーシャルメディア利用規約はどうだっただろうか?非常に基本的なところを押えている内容となっている。最後の部分「ソーシャルメディア投稿基準」に記してある通り、シアトル市では「ビデオ投稿基準」、「Twitter基準」、「Facebook基準」なども規定されている。近いうちにこれらも翻訳してこのブログで掲載する予定だ。