「定期購買」とは?
「定期購買」とは、Shopify社が運営するeコマース用のプラットフォーム「Shopify」で定期購入を実現するアプリです。
定期購入とは、一定期間のサイクルで商品を自動的に購入するサービスのことです。類似のサービスとしてサブスクリプションがあります。
定期購入は、所有することのできる物が対象なのに対し(例:食品や化粧品等)、サブスクリプションはサービスを提供するものであるのが特徴です。(例:月定額で動画サービス見放題)
Shopifyでは、2020年10月に定期購入用の新しいAPIが発表され、2021年1月から公式に提供されました。これにより、Shopifyでサブスクリプションの実装が可能となりました。
それ以前にもShopifyに定期購入アプリはありましたが、決済の際に外部サービスに飛ばすなど、使い勝手の面で不自由な場面が多々見受けられました。
API の登場によって、Shopify上で定期購入のシームレスな購入が可能となり、以降国内外で続々とアプリが登場しています。
弊社では、ECサイトで定期購入を実装する場合に積極的にShopifyでの定期購入の導入をお勧めしています。
Shopifyの定期購入アプリといえば、以前ご紹介したBold subscriptionsやRechargeが挙げられます。
今回は、アプリ「定期購買」のメリットやデメリット、実際に導入した体験談などをご紹介していきます。
「定期購買」でできること
1.「定期購買」で実現できる販売方法
(1) 柔軟な設定の定期購入
柔軟な配送プランを、日/週/月/年単位で設定可能。
最低 / 最大購入回数の設定も合わせて利用可能です。
また、割引に関しても
・初回購入時だけの割引
・定期購買だけの継続割引
など、細かい設定が可能です。
その他、2回目以降の決済日を固定する機能など、管理画面から柔軟に定期購入を設定することが可能です。
(2) サンプル販売
①1回目はサンプルで安く、2回目以降は通常商品を配送する
②1回目はデバイスとソフトウェア、2回目以降はソフトウェア利用料金
といった1回目と2回目の商品(価格)が異なる商品(サンプル販売等)の定期購買も可能です。
(3) BOX販売
定期購入におけるBOX販売とは、金額は固定のまま商品を選べるサービス機能です。
例えば、宅配弁当やスムージー、コーヒーなどの食品系や、サプリ等の定期購買において、
「1000円で30商品から好きな商品を5個選べる」
というように、単品商品の金額に依存せず、固定金額で販売が可能というユーザーライクな販売方法です。
こちらの「BOX販売」は、2022年3月から「定期購買」に実装された機能です。
(4) 頒布会、回数販売
頒布会とは、会員に毎回異なる商品を定期的に届ける販売方法です。商品は事業者がセレクトします。
(例:1回目は●●、2回目は▲▲、3回目は■■をお届け)
「12ヶ月ですべての商品がそろう」といった、回数が決まっている頒布会方式も設定可能です。
2.機能
「定期購買」は、
- ショップに合わせた販売方法
└ BuyLink機能やBOX機能、CRM連携など - データ分析
└ 分析レポートやタグでのセグメントなど - お客様とのやり取りをサポート
└ マイページでの顧客自身での変更、マイページでの商品訴求など - お客様の体験向上
└ 会員ランク機能や、決済エラー通知機能など
以上の4点に関して豊富な機能を搭載しています。機能に関しては都度開発追加されているため、「定期購買」公式サイトやShopify app storeで確認することをお勧めします。
3.操作
(1) 管理画面でできること
- 解約
- 一時停止
- スキップ
- 今すぐ注文
- 支払い方法の変更
- 配送先住所の変更
- お届け周期の変更
- 次回注文予定日の変更
- 次のお届け日時の変更
- 商品の追加
- 商品の変更
- 送料金額変更
- 会員ランク変更
- 再開
※13と14は画像に記載なし
(2) 顧客がマイページでできること
- 数量の変更
- 商品の変更
- 他の商品を定期購買に追加する
- 追加購入
- お届け日時の変更
- スキップ
- 一時停止
- お届け周期の変更
- 配送先住所の変更
- 支払い方法の変更
- 解約
- 商品の削除(2つ以上の商品を定期購入していた場合)
※12は画像に記載なし
※マイページ側に表示/非表示の設定も可能なため、解約のみマイページ側に非表示といった対応も可能。
4.料金プラン
(1) 料金プランの比較
「定期購買」には無料プランと2つの有料プランが用意されています。(※2022年8月現在)
無料プラン
無料
無料でSTANDARDの全ての機能が試せるプランです。
ただし決済方法であるShopifyペイメントのテストモードでのみ動作可能なので、本番環境で実際に運用するには有料プランに移行する必要があります。
よくある試用期間と異なる点は、こちらの無料プランには期限が設けられていないため、充分に試用し納得してから契約できるというメリットがあります。
有料プラン STANDARD
$49/月 + 取引手数料 1%
事業規模の大きさを問わず一律料金(※)なので、使えば使うほどお得になるプランです。(※もちろん、取引の数により取引手数料は異なります)
もちろん、定期購入に関する機能も充分です。
Shopifyの他の定期購入アプリと比較しても水準より多少安価ですし、ECサービス全体で見ると導入費用はかなり安価な方です。機能や得られる満足感を鑑みてお得感のある費用感といえるでしょう。
有料プラン ENTERPRISE
$299/月 + 取引手数料 1%
アプリリリース後新たに設けられたプランです。(2022年半ば〜)
STANDARDと比べてマイページカスタマイズなどの機能が追加されているプランのようです。
今後さらに機能が追加されていく可能性があります。
まずは無料プランで有料プランSTANDARDの全機能をお試ししてから、有料プランへの移行を検討するのがいいでしょう。
当初は有料プランはSTANDARDの1つのみでしたが、ENTERPRISEが追加されています。
STANDARDでも充分な機能を備えているので、STANDARDから始め、追加で必要な機能があればENTERPRISEを検討するといった流れもおすすめです。
(2) プランと機能
では、各プランの機能を詳しく見ていきましょう。
無料プラン
- Shopify peymentのテストモードでSTANDARDプランの機能をお試し利用可能
…STANDARDプランの全機能をテストモードの決済環境でのみ利用可能。本番環境で利用したい場合は有料プランに移行が必要。
有料プラン STANDARD
- 無制限で定期購買の顧客登録
…定期購買の登録顧客数が、無制限に登録できる。 - 無制限で定期購買の商品登録
…定期商品の登録数が無制限で登録できる。 - 初回割引/通常割引
…初回割引と定期の継続割引を設定できる。 - メール送信
…顧客宛のメール文面の編集、送信ができる。
(例:定期購買スキップ時のお知らせ) - 会員ランク機能
…定期購買商品の購入金額によってランクを作成し、ランクごとに割引率が設定できる。 - CSVエクスポート
…定期購買リストを注文単位/顧客単位でCSVエクスポート。 - 分析機能 など
…契約者数、月額の売上、購入単価、解約率などの分析レポートなど。 - 今後のアップデート機能
…今後アップデートされる機能を含む。
有料プラン ENTERPRISE
- 全ての機能が利用可能
…定期購買で提供されている全ての機能が利用可能。 - マイページカスタマイズ機能
…顧客のマイページ画面をカスタマイズ。 - API連携
…下記の内容をAPI経由で連携できる。
・契約情報
・商品情報
・顧客情報
・注文情報
・フルフィルメント
・フルフィルメントトラッキング情報
・定期決済情報
・お届け日の変更 - メールの送信元ドメイン設定
…メールのドメインをショップのメールドメインへ変更可能。(デフォルトではハックルベリーのドメイン「huckleberry-inc.com」から送信) - 今後のアップデート機能
…今後アップデートされる機能を含む。
「定期購買」のメリット
1.国内で最も選ばれているShopify定期購入アプリ
「定期購買」の開発元であるハックルベリー社は
「Shopifyパートナーズ オブ・ザ・イヤー 2021 ジャパン」を受賞しています。
この賞は事業者のニーズを的確に捉えたShopifyアプリを開発したことで、短期間で国内No.1のインストール数を獲得し、多くの事業者の成長を後押ししたアプリ開発パートナーに贈られる賞で、国内でも数千社のShopifyパートナーの中から受賞されています。
さらにハックルベリー社公式サイトによると、
「定期購買」は、国内で最も選ばれているShopify定期購入アプリ*です。
※Shopify定期購入アプリ国内No.1のインストール数(2021年11月時点)
ユーザーが多いということは、今後も国内でのShopify定期購入アプリのスタンダードとなる可能性があり、さらなる機能の充実や安定したパフォーマンスが期待できます。
2.日本製で、日本語対応
ほんの2〜3年前までは、日本語に対応したShopify定期購入アプリは見つかりませんでした。そのためBold subscriptionsのような海外製のアプリを日本仕様に設定するしかありませんでしたが、近年日本製のアプリも続々とリリースされています。
「定期購買」は日本の事業者が開発しており、日本製のため、当然管理画面なども全て日本語対応です。
単に言語のみ対応している場合と比べ、日本の商習慣に合った機能や、特商法をはじめとする法改正への対応が万全なため、やはり日本国内での導入に心強いです。(もちろん海外であっても導入は可能です)
3.カスタマーサポートが手厚い
前述の通り「定期購買」は日本製アプリなので、サポートも日本語で日本人が対応してくれます。
そればかりか、かなり手厚いサポートを受けられます。
驚いたのが、弊社が2022年1月に導入を検討していた際、まだ有料プラン加入前だったにも関わらず、無料でカメラありのオンライン面談を設定してくれたことです。
実際に導入した際の機能や、疑問点の解決を、1時間あまりに渡ってサポートしてくれました。その後も同じ担当者が引き続きメール対応してくれたため、疑問点があるとすぐに質問ができ、回答が送られてきました。希望すればZoomミーティングも設定してくれるとのことでした。これはかなりありがたかったです。
公式サイトでは、メールは2営業日以内に100%返答する旨謳われています。
自社の提供したいサービスに合うか、すでに導入している他のアプリとの連携はどうか等、アプリの導入には疑問がつきもの。これを導入前の段階でも導入してからも日本語で手厚くサポートしてもらえるというのは、安心の後押しになるのではないでしょうか。
4.連携可能なアプリが多数
「定期購買」は公式に案内されている連携可能なアプリが多数あります。
外部サービスとの連携充実
Shopify app store「定期購買」より引用
LINE/Klabiyo等CRMや、ネクストエンジン、オープンロジなどのロジ系アプリはもちろん、ポイントやスマレジ、リファラルアプリなど多数のアプリと連携!今後、集客や分析系サービスとも連携予定!他のサービス連携により売上向上を強力サポートします!
連携可能なアプリは順次追加されるようなので、「定期購買」公式サイトをご確認ください。
以前ご紹介した ポイント機能実装アプリ「easyPoints」とも連携しており、「定期購買」で導入した定期購入の商品に毎回ポイント付与されることが確認されています。
ただし、ポイントの使用に関しては初回の購入にのみ使用でき、2回目以降の購入には使用できません。恐らく2回目以降は自動購入となるためでしょう。このことは「定期購買」サポートに相談し初めて知った内容です。
5.豊富な機能
「定期購買」は、定期購入に関する機能が豊富に搭載されています。
会員ランクやお届け回数ごとの割引設定やBOX機能など定期購入の販売に関する設定はもちろん、顧客への通知やCRM連携など、まさに痒いところに手が届く機能が盛りだくさん。
しかも未実装の機能であっても積極的にリクエストを受け付けるなど、機能のアップデートも意欲的に行われています。
6.顧客がマイページから変更可能
定期購入を申し込んだ顧客が、マイページからさまざまな変更を行うことが可能です。
例えば、お届け日の変更/スキップ/一時停止/解約/商品変更/他の商品追加/追加注文/住所の変更など。(参考:顧客がマイページでできること)
それぞれマイページ側に表示/非表示の設定も可能で、解約のみマイページ側に非表示といった対応も可能です。
これは、顧客が何らかの変更をしたい都度、ショップに問合せせずに自身で手続きを終えられるという利便性の高さ、ショップ側からすると顧客対応のコスト削減のメリットがあります。
7.専門知識がなくても簡単に実装可能
「定期購買」を実装するには、以下の導入方法を行います。
- アプリのインストール
- テーマへの自動インストール
- 定期購入商品の登録・詳細設定
- 公開
これは公式サイトに”最短5分で設定・公開が可能”と謳われるほど簡単です。
(定期購入商品の登録や細かい設定などをしていたらさすがに5分では済まないとは思いますが…)
何よりも2の「テーマへの自動インストール」が便利で、ボタン一つでテーマへのインストールが完了し、自動でチェックアウトボタンの直前に定期購買のプランが表示されるようになります。
専門知識も不要なので、導入しやすいアプリです。
弊社では、自動的にインストールされたマイページの配置を整えた際にコード知識が必要となりましたが、カスタマイズを必要としなければ専門知識は不要と言えます。
8.他サブスクアプリからの乗り換えも簡単
Shopifyには他のサブスクアプリも多数存在します。
すでに利用しているサブスクアプリから「定期購買」への乗り換えサポートを無償で行っているようです。(2022年8月現在)
アプリの移行には不安がつきものなので、公式にサポートがあるというのはうれしいですね。
「定期購買」を実際に導入してみて
1.所感
弊社ではパートナーとしてマーチャント様のECサイトを構築・運営サポートを行っておりますが、実際に「定期購買」を導入しWeb上での定期購入販売を始められたマーチャント様を担当させていただいて、「定期購買」は非常に優秀なアプリであると感じました。
まず導入までのサポートが手厚いこと、導入後も疑問点があったらいつでもサポートに相談できること、インストールした後の設定のしやすさなど、基本的な機能に問題がないばかりか、マイページのカスタムなどプラスアルファのカスタマイズも有料プランENTERPRISEでは可能。
操作もわかりやすいため、運用も特に問題がなくスムーズに行えます。
フレンドリーなサポート体制のおかげで、疑問点は気軽に相談できますし、不具合があった場合すぐに対応してくれます。定期購入を実現する手段としてコスパもよく、お勧めのアプリです。
2.注意点
実際に「定期購買」を導入してみてわかった、注意点をご紹介します。
(1) 「お届け日時」の指定は2回目以降から可能
「定期購買」自体の機能として、マイページから2回目以降の「お届け予定日」を変更できる機能があります。
ただ、これは2回目以降の指定であって、1回目の日時指定をしたい場合、Shopify基本の機能や「定期購買」の機能として日時指定がないため、別のアプリを導入して実装する必要があります。
「定期購買」と連携しているアプリ「配送日時指定 .amp」なら、顧客が購入時に「配送日」や「配送時間帯」を指定できるようになります。
その他の「定期購買」と連携していない配送指定アプリの場合、1回目の配送日時指定をそのアプリで行い、2回目以降の配送日時指定は改めて「定期購買」の管理画面または顧客マイページから指定するという手続きが必要となります。
(2) 2回目以降の「お届け日時」変更は永続的に反映される
初回のお届け日時指定は別のアプリでするしかありませんが、2回目以降のお届け日時指定は定期購買アプリの機能で、顧客がマイページから指定することができます。(ショップ側の管理画面でも設定可能)
「定期購買」で指定する「お届け予定日」は、一度指定するとそれ以降毎回のお届けに永続的に反映されるようになります。(例:翌月15日午前中に指定の場合、放っておいても毎月15日午前中にお届け指定される)
(3) 納品書に定期便の回数を表示させることはできない(CSVには反映可)
定期便が現在何回目の注文かというのは、定期便の注文に「定期購買」が自動付与してくれるタグで確認することができます。
こちらのタグは注文管理の個別の注文ページで確認できる他、注文データのCSVにも含むことができます。
ただし、確認したところ、納品書にこのタグを出力することはできないようです。(Shopifyの仕様上、納品書にこのタグを書き出すLiquidが用意されていないため)
そのため、納品書にタグによって自動的に回数を記載することはできません。(これは「定期購買」だけではなく全ての定期購入アプリにいえることです)
お客様に回数を確認いただくには、別の方法を検討する必要があります。
(4) 無料プランは本番環境では動作しない
「定期購買」は無料・有料のプランが用意されていますが、
無料プランは
・Shopify peymentのテストモードでSTANDARDプランの機能をお試し利用可能です
・Shopify peymentを有効にした決済は有料プランへの切り替えが必要です
つまり、テスト決済しかできないということなので、本番環境で導入するには有料プランに申し込むより他ありません。
無料のテストモードで動作確認を充分に行ってから有料プランに移行できるため、親切なプラン設計と言えそうですが、本番環境で動作する無料のプランは実質ありませんので、注意が必要です。
(5) 顧客に向けての説明資料が不足している
アプリを導入するマーチャント(店舗)へ向けての資料はハックルベリー社の公式サイトに豊富に準備されているのですが、「定期購買」を利用する末端の顧客へ向けての資料は現在のところ見当たりません。
アプリのUI自体がわかりやすく、説明がなくとも直感的に使える作りにはなっていますが、各種手続きに関しての説明が欲しい場合は個別にページを作成する必要があります。
まとめ
以上、この記事ではShopifyアプリ「定期購買」の特徴や導入方法について紹介してきました。
「定期購買」はShopifyに定期購入を導入するアプリとして非常に便利な機能を持っており、コスパもよく開発が意欲的、さらに日本語フル対応と、おすすめできる優秀なアプリです。
なお、ネットビジネスエージェントでは、今回ご紹介したeコマースプラットフォーム「Shopify」をはじめ、カラーミーショップなどの日本企業のeコマースプラットフォームの開設・導入支援も行っておりますので、お気軽にご相談ください。