昨日、長崎県庁の職員を対象としたソーシャルメディアセミナーで講師を担当させていただきました。
その中で、ソーシャルメディアの社会的な影響をお伝えするための事例としてエジプト革命でソーシャルメディアがどのような役割を果たしたのか、ということについてお話させて頂きました。ソーシャルメディアが社会に与える影響を考える上で非常に重要な事例です。また、今後も同じようなことが必ず起こると思います。そこで、その経緯や内容をここで簡単にまとめておきたいと思います。
まずは、エジプト革命の概要です。
エジプト革命の概要
経緯
チュニジアにおいて2010年12月17日、失業中の一青年が焼身自殺を図ったことをきっかけに反政府デモが発生。国内全土に拡大していった。2011年1月14日にベン・アリ大統領がサウジアラビアに亡命し、23年間続いた政権が崩壊した。それがエジプトに飛び火し、29年間の独裁政権を維持したムバーラク大統領に対して退陣を要求するデモが繰り返され、2月11日にムバーラクが退陣。エジプト革命が起こることとなる。
2人のキーパーソン
ハリド・サイードとワエル・ゴニム
2人のキーパーソンについて触れておきます。チュニジアのジャスミン革命の影響や、以前からのくすぶりがあった土壌の上でこの2人が起爆剤の役目を果たしたというのはほぼ間違いないようです。
ハリド・サイード(Khaled Said)
2010年6月に、ハリド・サイード(28歳)は、警察の麻薬取引への関与をあばく動画をYouTubeに公開した。しかしその直後、アレキサンドリア市内のネットカフェから引きずり出されて、警察当局に拷問され殺害された。
ワエル・ゴニム(Wael Ghonim)
ワエル・ゴニム(30歳)はGoogleの中東・北アフリカ担当幹部。We are all Khaled Said という Facebookページを匿名で立ち上げる。このページには数週間で222000人近くが参加。2011年1月25日の大規模デモへの集結への呼びかけなども行っている。1月、Googleに個人的理由でエジプトに戻ることを告げた後、エジプト到着後の1月28日に警察当局に拘束され行方不明に。12日後に解放された。
解放当日、エジプトの民間テレビ局のインタビューを受けた際には、「僕はヒーローではない。12 日間眠っていただけだった。ヒーローだったのはストリートにいた人々であり、襲撃を受けた人々であり、拘束されて身の危険にさらされた人たちだ。僕はヒーローではなかった。」と語り、また、デモに参加し命を落とした人々の映像を見た際には涙した。この彼の姿が数百万人の心を動かし、その後のデモにはこれを見たエジプトの人々が数多く参加したと言われている。
ワエル・ゴニムが開設したFacebookページ We are all Khaled Said
ワエル・ゴニムが開設したFacebookページのタイトル “We are all Khaled Said”は「僕らはみんなカレド・サイードと同じような境遇にいる。」という意味です。アラビア語と英語のバージョンが開設されています。このFacebookページ内で、どのような行動を起こすのか多くのエジプトの人々が語り合って実行に移していったようです。
https://www.facebook.com/ElShaheeed
https://www.facebook.com/elshaheeed.co.uk
ワエル・ゴニム拘束直前のTwitterでのつぶやき
ワエル・ゴニムはTwitterでも情報を配信。最大規模となった1月25日のデモへの参加も呼びかけています。「みんなタハリール広場に集まってください。あなたたちの力が必要です。私たちは10000人以下しか集まっていません。警察もいません。」という呼びかけ。
http://twitter.com/#!/Ghonim/status/29912007222239232
ワエル・ゴニム解放直後のTVインタビュー
ワエル・ゴニムはこれらの活動の結果、警察に拘束されることになります。1月28日に拘束され行方不明になり、12日後に解放されました。そしてその直後にテレビ局のインタビューを受けています。このインタビューが民衆の心をうち、翌日の8日のデモに多くの人たちを集めたと言われています。彼はこの中で、「僕はヒーローではない。12 日間眠っていただけだった。ヒーローだったのはストリートにいた人々であり、襲撃を受けた人々であり、拘束されて身の危険にさらされた人たちだ。僕はヒーローではなかった。」と語っており、後半は犠牲になった人々の写真が映し出されると感情をあらわにしながら泣き崩れます。
ワエル・ゴニム解放翌日2月8日のデモ
ワエル・ゴニムがエジプト革命をTEDで語る
ワエル・ゴニムは後にTEDという番組でエジプト革命について語っています。本人の口から語られる貴重な動画です。(日本語字幕付き)
サイレントデモなどの様子
ワエル・ゴニムがTEDで語ったサイレントデモなどの様子がわかりやすい動画(スライドショー)です。
もし勇気があれば、ワエル・ゴニムがTEDで「詳細を覚えている」と語ったハリド・サイードの惨殺写真も検索して見てみることをお勧めします。非常にショッキングな写真ですが、この写真がインターネット上で出まわり、多くの人たちの心にエジプト政府の悪政の象徴として刻み込まれたんだ、ということを共有すると、より彼らの革命が身近に感じられます。
僕らはソーシャルメディア時代に生きているということを、エジプト革命の事例を通じてあらためて確認し、一人ひとりが夢をもって進んでいけるような社会をみんなで作っていければ素晴らしい、と思いながら、締めくくりたいと思います。