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Appleのジョナサン·アイブが語る「Appleの製品開発と成功の秘訣」

Appleのジョナサン・アイブのインタビューAppleのジョナサン·アイブが語る「英国と自身とAppleのデザイン」Appleのジョナサン·アイブが語る「アイデアが形になるプロセスとチームワークと今後のApple」の2つを最近アップしたが、今回はLondon Evening StandardのSir Jonathan Ive: The iMan comethを翻訳してお届けしたい。

Appleの仕事の進め方や特徴、ジョナサン・アイブが考える成功の秘訣について語った興味深いものだ。早速読み進めてほしい。

目次

サー・ジョナサン·アイブ:iManが来る ― 英国の鬼才が語るAppleのアイコン的商品設計の背後

サー・ジョナサン・アイブ、愛称ジョニーは、間違いなく世界で最も影響力のあるロンドナー(ロンドンっ子)だ。チングフォードに生まれた彼は現在45歳。サッカー選手ベッカムと同じ学校に通ったという。高校生のときに現在の妻ヘザーに出会い、1987年に結婚して双子の息子をもうけ、現在サンフランシスコに在住する。

Apple社のインダストリアルデザイングループ担当上級副社長であるアイブ氏は、MacコンピュータからiPod、iPhone、最近ではiPadに至るまで、Apple社製品の推進を担う人物だ。そのアイブ氏がApple社クパチーノ本社で、イブニング·スタンダード紙と独占インタビューを行った。

Q:あなたは最近、デザイナーとして爵位を受けましたね。その瞬間、誇りに思いましたか?

A:非常に興奮しましたし、同時に謙虚な気持ちになりました。私の製品はイギリスという国の産物であるということや、デザインと製作の歴史、そしてイギリスが産業革命の発祥地であるということを非常に意識しています。アイデアや独創的な思考を重視することは英国文化の一部であり、多くの点でそれがデザインの伝統を物語っています。

Q:ロンドンは、まだデザインを担う重要な都市だと思いますか?

A:私は1992年にロンドンを離れましたが、その後も年に3、4回は訪問していて、ロンドンがとても好きなんです。非常に重要な都市だし、デザインや今迄にはなかった新しい何かを創造するのに、大きな貢献をしてくれる場所です。

Q:ロンドンとシリコンバレーの違いは何ですか?

A:ロンドンは、さまざまなクリエイティブ産業と近接な関係にあり、その多くがユニークな方法をとっています。その点において、シリコンバレーとは非常に異なる感じがしますね。

Q:カリフォルニアに移住したのはなぜですか?

A:カルフォルニアには目覚ましいほどの楽観性と、未来を恐れることなく何でも挑戦するチャレンジ精神があり、それは素晴らしいことだと思います。そして、アイデアのある何人かの人が集まり会社を設立しようという、シンプルで実際的な思考があり、私はそういうプラクティカルで直接的なアプローチが好きなんです。

そこにお金を儲けようという考えはなく、ただアイデアがあるから、それを試そうとする。それがここの土地柄なんだと思います。

Q:Appleのデザインは、他と何が違うのでしょうか?

A:Apple社のデザインプロセスを言い表す適切な言葉選びにいつも苦労しますが、ともかく、デザインとプロトタイプ、製作の3つに尽きます。これらを切り離してしまうと、最終的な結果に影響を与えてしまうと思います。何か良いことが起こりつつあるとき、それは新しいもので、それが新しいものであれば、以前にはなかったものを作り上げるための問題とチャレンジにぶち当たります。それらに取りかかり解決するためにはかなりの集中力を必要とします。そして、そこには好奇心と楽観性が必要であり、この二つを組合わせることは結構難しいことです。

Q:Apple社での新製品はどのようにできるのですか?

A:創造的なプロセスにおいて好きなところは世間知らずに聞こえるかもしれませんが、昨日にはなかったアイデアや解決策が、次の日には突然現れる、という点です。私にはそれがとてつもなく刺激的で、概念的にも非常にすごいことだと思います。

アイデアや創造性を持つことの本質は非常に刺激的です。 孤独で壊れやすく、形を成さないアイデアがあるとします。この時点で、アイデアは会話となりますが、依然として壊れやすいままです。

そして、その抽象的なアイデアがもう少し具体的な会話になったとき、その瞬間がもっともドラマチックな変革を遂げるときです。それから3Dモデルを作ったときは、おおざっぱではあるけれど、漠然としたアイデアが形を成し始め、全てのことがここで変わって、プロセス全体が動き出します。これが刺激剤となり、いろんな人達が商品に対してフォーカスしはじめます。これは驚くべきプロセスです。

Q:何が偉大なデザイナーをつくりだすのでしょうか?

A:頭の回転が早く、好奇心があり、間違うことを恐れないことが重要です。よく「○○だったらどうする」的な質問が出てきますが、それと共に、事情や重要事項に関する完璧な集中力と鋭い洞察力が必要です。それが最も重要なのです。それはコントロールしなければならない矛盾なのです。

Q:新製品を作り上げるにあたって、何がゴールとなりますか?

A:私達の目標は非常にシンプルなものです。それはより良い製品をデザインし作成することです。さらに良いものを作ることができないのならば、やめてしまうしかないのです。

Q:なぜApple社の競争相手は真似ができないのでしょうか?

A:他社が真似をするのは非常に珍しいことで、そのほとんどは何か違ったことをする方に熱心です。少なくとも新しく見える何かです。私は、それは完全に間違った目標だと思います。製品は、真に優れている必要があります。そしてそれは試練を必要とし、それが私たちを真に優れた何かを作り出す意欲へと駆り立てるものなのです。 価格、スケジュールまたは他と違って見せるための奇をてらったマーケティング目標で動いたのでは、組織は機能しません。製品利用者のことはほんの少ししか考慮しない企業ゴールでしかないのですから。

Q:あなたが最初にデザイナーの重要性を認識したのはいつですか?

A:最初に私がデザイナー性を意識したのは、Macを使用したときです。80年代の大学在学時にコンピュータをいろいろと使用して恐ろしい経験をしました。それからMacを発見し、それがとても劇的な瞬間だったことをはっきり覚えています。Macを作った人達のセンスが見えたんです。

Q:あなたがiPodなどの製品のアイデアを思い付くとき、問題を解決しようとしているのですか?

A:さまざまなアプローチが存在します。時々物事に苛々させられることがありますが、それは問題を認識させることになります。この場合は、実用的なアプローチでもっともチャレンジのないものといえます。もっと難しいのは、チャンスに興味をそそられたときです。私が思うに、それが本当にデザイナーのスキルを発揮するときです。認識しているのは問題ではなく、誰もまだ必要性を明確にしていません。しかし、「これをやったらどうなるだろうか」「これとあれを繋げたらどうなるか?」「利便性があるか?」など質問が出始めたときに、個々の技術的な問題を解決していくよりも、機器のカテゴリー全体をくつがえすようなものを創造するチャンスとなり得るのです。これは真のチャレンジで、エキサイティングなものです。

Q:そのアプローチが、Apple社の新製品につながっているいますか?

A:例としては、iPhone、iPodやiPadのような製品です。細部への熱狂的なまでのこだわりと問題を発見すること、そしてその解決に取り組むことが非常に重要です。これが分毎の、そして日毎の経験となるのです。

Q:どのように消費者がその製品を求めるだろうと判るのですか?

A:私達はデザイナーの仕事でもあるフォーカスグループインタビューを行いません。今日のデザインを利用する人達に、明日の可能性について問いただすのは不公平なことだからです。

Q:あなたのデザイナーチームは非常に少人数ですが、それがその成功の鍵なのでしょうか?

A:Apple社では、あらゆる専門分野の人達がひとつの製品に対して共同作業を行う複雑な方法を採っています。このことが、私がこの仕事を楽しめる理由のひとつなのです。私は、シリコン設計者、電子、機械エンジニアと連携して作業を行いますが、共同作業のときは誰が何を決めるのか普通ではわからないと思います。私達は同じ場所にいて、同じ目標を持ち、素晴らしい製品を作ろうという一つの概念を持ったチームです。

これを可能にするもう一つの理由は、長年一緒にこれを行ってきたということです。打ち勝ちがたい課題に直面しているときは、団結した自信が湧いてきて、iPhoneやiPadを作ったときにも、頼れる情報は何もなかったものの何度も「これは必ず功績を残す」という気持ちが湧きました。

Q:プロジェクトの細部のために横道にそれるのは簡単ですか?

A:新しい製品の問題を解決しようとしているときは、問題に完全に集中しているので、メインの製品から何歩も遠ざかっています。その問題解決法は少し抽象的になりがちで、製品を見失うことは簡単です。しかし長年の経験を持てば、努力次第でやり遂げられるという自信がつくものです。

Q:細部へのこだわりは、コントロールが可能ですか?

A:これは信じられないほど時間がかかるもので、何ヶ月も何ヶ月も、そしてさらに何ヶ月も、詳細について時間をかけることもあります。しかし、この小さな問題を解決しなければ、他の問題も解決せず、製品そのものができません。信念を持っていても、解決することができないんじゃないか、という気持になることがしばしばあります。これがイノベーションの難しい部分です。参照できるものは何もないのですから。

Q:どのように成功したということが判るんですか?

A:デザイナーにとってこれを言うのはとても変なのですが、製品づくりでとてもイライラさせられることは、デザイナーが私の目の前でしっぽをふってみせることです。

私達のゴールはシンプルなものづくりであり、それは他の方法では想像できないようなものです。シンプルさはすっきり整頓されていることとは違います。正しく捉えれば、製品により近く、集中できます。例えば、新しいiPadのために作ったiPhotoアプリは、完全に利用者を飲み込んで、iPadを使っていることを忘れてしまうほどです。

Q:イノベーションの最大のチャレンジは何ですか?

A:未だにこれが非常に難しいことに驚いていますが、私達がこれをする限り、いつそこにいるかを確実に知ることです。ほんの小さな変更でも、製品が突然姿を変えて、たちまち不便になることもあります。

iPadにおける問題解決のいくつかは、かなり顕著であり、話題にしたくなるようなこの種の危険があるのです。素晴らしい皮肉だと思うのは、私たちが解決してきた問題解決は非常に困難なものであっても忘れられやすいということです。でもとにかくこれが私達の仕事で、使用者は完成された製品が非常に手をかけれらたものだと判るのです。

Q:消費者は本当に良いデザインを求めているのでしょうか?

A:この20年間で私達が学んだことの一つは、人々が何かを好きになる理由を明確に表現することは非常に難しいということです。消費者として私達は非常に洞察力があるもので、手をかけられたデザイン、または欲にまみれた製品を敏感に感じ取るものです。そして、それは私達が本当に励みにしていることの一つです。

Q:ユーザーは、Apple社の製品にほとんど取りつかれたようになっていますが、これはなぜでしょうか?

A:あからさまに聞こえるかもしれませんが、私はMacを使用したときの驚きを覚えていますし、それを作った人達とその価値について敏感になりました。私達の製品への人々の感情的なコネクションは、私達の製品に対するこだわりやパッションを感じるから起こるんだと思います。

まとめ

今回取り上げたインタビューの内容は、前回のAppleのジョナサン·アイブが語る「アイデアが形になるプロセスとチームワークと今後のApple」でジョナサン・アイブが語っていたこととかぶる内容がたくさんあるが、それだけ彼のデザインに対する考え方、Appleの製品開発のエッセンスが語られるといっていい内容だろう。

「チームワークの大切さ」「細部へのこだわり」「アイデアから製品がうまれるプロセス」など心に留めておきたい内容がたくさんあった。

その他のジョナサン・アイブのインタビューをまだ読んでいないようであれば、ぜひ以下の2つのインタビューも合わせて読むことをお勧めしたい。

参考サイト:London Evening Standard

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